【白内障手術症例 No.57】70代ピアノ教師 不満例(連続焦点型 テクニスシナジー)
眼科検診で白内障を指摘され、近医大学病院の眼科ドクターに当院を勧められたとのことで初診された強度近視の方です。
ご職業がピアノ教師であり、60~70cmを眼鏡なしで見えることをご希望され、ご相談の結果、近方30cmから遠方まで連続的に見える多焦点レンズである、テクニスシナジーでの手術となりました。
術後は両眼とも裸眼で遠近とも1.2以上の大変良好な視力となりましたが、「ご自分でピアノを弾く際には大丈夫だが、生徒さんの後ろに立っての指導時に思ったよりも楽譜距離が見えにくい」との訴えがありました。視力的には問題なさそうでしたので、いわゆる「慣れ」を期待して術後1ヶ月まで経過観察させていただきましたが、ピアノ指導時の楽譜の見えづらさは、満足いくレベルには改善されませんでした。結局60~70cmを見るためだけの眼鏡を作成されることとなり、残念ながらご期待に沿いかねる結果になってしまい大変申し訳なく思いました。
本症例を経験して、以前にテクニスシナジーを使用した方でも同様に、60cmほどのデスクトップパソコンあたりがやや見えにくいと言われた方が、他にもおられたことを思い出しましたが、私の使用経験上、パンオプティクスでは60cm程度の見えにくさの訴えは皆無でした。この方のように近方30cmよりも60~70cm付近の視力が重要と考える方は、確実性を考慮して60cmにピンポイントで焦点距離を持つパンオプティクスを選択された方が良いのかもしれません。
回折型多焦点レンズは種類も増え性能も拮抗し、患者様もどれを選択すべきか悩ましいと思います。なかなか決め手がなくレンズを決定できない方は、30cmならテクニスシナジー、60cmならパンオプティクス、1m付近なら5焦点レンズのインテンシティー(INTENSITY)といった、それぞれのレンズの特徴的な焦点距離と、ご自分の見たい距離の重要性で選択されると、後悔しない結果を得られるのではないかと考えます。もちろん専門家の観点からのアドバイスもさせていただきますので、ご希望の方はぜひ診察時にご相談ください。