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連続焦点型多焦点レンズ テクニスシナジーの特徴と違い

このたび新しい選定療養対応の多焦点レンズである「テクニスシナジー(TECNIS Synergy)」が一般発売され、これまでのレンズとの違いを質問される機会が増えましたので、簡単にその特徴を説明させていただきます。

①約35cmから遠方までの連続した広い明視域
テクニスシナジーは従来のテクニスマルチのような2焦点型レンズと、シンフォニーのような焦点深度拡張型レンズを合わせた、連続焦点型レンズと位置づけられています。つまり近方約35cmから遠方まで落ち込みなく連続的に見えることを特徴としています。近見加入度数はメーカーから公表されておりませんが、下図のように、30cm~遠方まで両眼で0.8以上の視力が出るスペックとしてデザインされております。

 

②良好なコントラスト感度により暗所でも視力良好
また、通常多焦点レンズは光エネルギーロスによるコントラスト低下が問題になることがありますが、テクニスシナジーは下図のように、その他の3焦点レンズと比べても瞳孔径が大きくなる暗所でも、コントラスト感度が落ちないことを特徴としています。具体的には、薄暗いレストランでもメニューがちゃんと読めるといったところでしょうか。

 

③夜間の異常光視症(ハロ・グレア・スターバースト)はやや強い?

瞳孔が小さいとき(十分明るいとき)は、ピンホール効果も加わりピントが合いやすくなります(焦点深度が深くなる)。ピンホールメガネをかけると見えやすくなるのは、こちらの原理によりピントの合う幅が広がるからです。ですので、瞳孔径が大きくなる薄暗いところは、ピントが合いにくくなる多焦点レンズが苦手とする状況となりますが、テクニスシナジーは独自の広い回折格子デザイン(レンズの溝)により、暗所でのコントラスト感度が低下しないように工夫されています。
人間の身体は、近くを見ているときは縮瞳して瞳孔が小さくなりピントが合いやすくなるようにできています(近見反射)。一般的にレンズ周辺部まで回折格子があると、瞳孔径が大きくなる暗所でも近方視力は保ちやすくなりますが、遠方のコントラスト感度が低下しハログレアが強くなる傾向があります。そこで、あえてレンズ周辺部1.5mmの部分は回折格子を入れずに遠方用にして、ハログレアを軽減しコントラスト感度が低下しないように工夫しているのが、3焦点レンズのパンオプティクスです(下図参照)。レンズそれぞれに短所長所があり、新しいものが常に良いとは限りませんので、高い術後満足度を得るためには、ご希望に則したレンズ選択が重要となります。

上記のように、広い明視域と広い回折格子を持つテクニスシナジーは、どうしてもハログレア特にスターバーストが強い傾向があります。そこで紫色光をフィルタリングすることで、従来のレンズよりも、明所でのスマートフォンスクリーンや、暗所での車のヘッドライトによる異常光視症が低減されています。

 

参考までに、Vision Simulator(https://www.vs-eyesarc.org)にて設定されている夜間運転時の見え方のシュミレーション結果を下記に掲載しておきます。テクニスシナジーと同タイプの連続焦点型のシュミレーションはありませんが、おそらく⑥焦点深度拡張型よりさらにスターバーストなどが強いと推測されます。 ⑧連続焦点型では、⑥焦点深度拡張型よりはハロが軽減されているようですが、⑦3焦点型よりはスターバースト・グレアが強いようです。なお、異常光視症の程度は、瞳孔径や角膜収差の大きさなどにより個人差がありますので、御了承ください。

①正常

②白内障(グレード3)

③単焦点レンズ

④2焦点(+4.0加入)レンズ

⑤低加入度分節型レンズ

⑥焦点深度拡張型レンズ

⑦3焦点レンズ

⑧連続焦点型レンズ(New)

つまり、テクニスシナジーの特徴は以下のようになります。

①35cm程度から遠方までの連続した広い明視域
②良好なコントラスト感度により暗所でも視力良好
③ハロ・グレア・スターバーストなどの異常光視症はやや強い

上記の特徴をふまえ、個人的な優先度により、メリット・デメリットを考慮されてのレンズ選択をお勧めいたしますが、御不明な点や御自分での判断が難しい場合などは、お気軽に御相談ください。