診療内容

白内障手術症例集
単焦点眼内レンズ

海外在住 70代女性 白内障手術症例#74 近視眼片眼手術(左眼:テクニス アイハンス)

  • 術前

    右眼
    遠見:1.0p(1.5)
    近見:0.6(1.2)

    左眼
    遠見:0.1p(0.3)
    近見:0.3p(n.c.)

  • 術後

    右眼
    手術なし

    左眼
    遠見:1.5(n.c.)
    近見:0.9(1.2)

Clareon® Vivityクラレオン ビビティ)の国内発売予定が大筋決まったようですので、Vivity(ビビティ)と悩まれていた症例です。

両眼の白内障手術相談にて2022年6月初診の方です。海外在住の方で一時帰国中の受診であり、現地眼科も受診済みで、そちらではテクニスアイハンと日本でも発売予定の Vivityを勧められているとのことでした。

白内障に関しては、右眼は年齢相応の皮質白内障を認めましたが、左眼は進行した核白内障に加え、瞳孔量に及ぶ強い皮質混濁もきたしており、明らかに左右差のある白内障でした。頭部外傷の既往があるとのことでしたので、手術の際にはその影響も考慮する必要がありそうでした。

視力に関しては、右眼も白内障はあるものの矯正視力はまだ1.5と良好でしたが、左眼0.5まで低下しておりましたし、眼底検査でも明らかな視力低下をきたすその他の疾患は認めませんでしたので、左眼は「白内障手術で視力向上が期待できる眼です」と説明させていただきました。ご希望にて角膜波面収差解析にてVivity含めた多焦点レンズの適応有無も評価しましたが、高次収差も乏しく十分に多焦点の効果が発揮される可能性が高い結果でした。
当時、居住されている国では既にVivityも使用されておりましたので、いつ日本で使用可能になるか不明なレンズを待ち続けるよりは、気持ちが固まっているなら現地でVivityでの手術をお勧めし、初診時は手術の予定を組まずに悩んでいただき、当院での手術のご希望であれば再度受診いただくこととしました。

その後半年ほど経過し、症例No54を見てアイハンスをご希望とのことで再診されました。左眼の白内障には後嚢下混濁も加わり、矯正視力もさらに0.3まで低下しておりました。アイハンスとVivityは構造上似ている点はありますが、加入度数アイハンス0.5D程度に対してVivity2.0D程度レンティスコンフォートより若干強い(テクニスシンフォニーと同程度)と報告されておりますので、両者を同じ土俵で比較することはナンセンスと考えます。この方も術前検査時は-1.5D程度の近視眼あり、遠方同様に近方視力にも期待を持たれていましたので、その期待に応えるにはVivityの方が確実と再度お伝えしました。しかしながら、すでに近方視力0.2~0.3まで低下しており、アイハンスでも目標度数を工夫すれば現時点よりも、うまくいけば右眼よりも遠方も近方も見えるようになる可能性が高いことをお伝えしたところ、最終的に心残りなくアイハンスでの手術をご希望となり、手術の予定となりました。

もともとやや小瞳孔でしたので、ピンホール効果角膜乱視(収差)による偽調節も期待できる眼であり、右眼は裸眼遠方視力はまだ0.8~0.9と比較的良好でしたので、左眼-0.5D=2m程度を目標としました。遠方は右眼と同程度以上の視力、かつアイハンスの加入度数0.5Dにより2~1mは頑張らずとも確実に見えより近方小瞳孔による焦点深度拡張に期待した設定になります。もう少し近方狙いも可能ですが、右眼+1.0D程度の遠視眼となっていたため、左右差の問題もあり-0.5D狙いでの手術となりました。

眼軸長に対し角膜屈折度がやや強い眼であり、近視寄りにズレるリスクも考慮して複数レンズを準備し、最終的にには術中波面収差解析装置ORAシステムの結果を参考にレンズ度数を決定して手術は問題なく終了しました。なお当院では、屈折誤差リスクに変わらず全例術中波面収差解析装置(ORAシステム)を使用しております。術後は期待以上に近方視力が良好なことに「見え方、最高に良いです!」と大変喜んでいただけました。当初はバランスも考え右眼も翌週に手術予定としておりましたが、「もう十分満足!」とのことで、やはり右眼は手術しないこととなりました(^^;)。

 

通常の白内障手術とは緊急を要する手術ではなく、「手術をしてでも視力を上げたい方」がする手術と考えますので、手術適応・時期は一様でなく患者様の事情それぞれですし、眼鏡装用で満足できている方にはこちらから手術をお勧めすることは致しません。この方のように新しいレンズの発売を待つことも選択肢の1つとできる疾患ですので、患者様におかれましては、なかなかを手術時期を決定しづらい面もあるかも知れませんし、手術する側としても、安全面さえ許せばギリギリまで待つことができます。遠方/近方視力・眼鏡不要・コントラスト・ハログレア・国内承認・経済面などなど、優先度は人それぞれかと思いますので、悩まれている方は納得するまで手術を焦らずに、まずはお気軽にご相談ください。

最後にメーカー公表のVivity焦点深度曲線を提示しておきます。

このように両眼視力テクニスシンフォニーとほぼ同様50cm弱まで0.8以上が確保され(単焦点は0.4程度)、かつハロ・グレアといった異常光視症は単焦点とほぼ同等に少ないのことです。また下図のように、英文になりますがフォントサイズ8ptでも、1分間に80単語以上読める実用視力が確保されていると報告されております。

テクニスシンフォニーが登場したときは、初の焦点深度拡張型ということで、使用する側にとっては度数ズレや乱視にも強いため、これまで多焦点レンズを使用したことがなかった医師にも扱いやすく、ユーザー層が広がった印象がありました。今回のVivityも同様の動きがあるのではと推測しますが、先進医療保険の対象がなくなった現在は、その費用がどうなるのかが問題となると思われます。

素材は異なりますが、米国ではアクリソク素材のVivityの発売からほぼ2年経過し、長期予後含め既に多数の使用報告がなされています。最近では非優位眼-0.75Dに合わせたり、3焦点レンズのパンオプティクスにすることにより、ほぼ眼鏡が必要なくなるをことも報告されておりますので、レンズの特性や使用方法について随時情報をアップデートさせていただきます。

 

Q.手術前はどのような状態でしたか?

ボーッとした感じ

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

ネットでのリサーチで

Q.手術中に痛みはありましたか?

ありませんでした

Q.手術後の見え方はいかがですか?

すべてが明るく見える

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

パソコンがよく見えるようになった

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

クオリティが良さそうだったから単焦点を選んだ

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

ぜひ勧めます
ホームページに記されている内容が良かったから当院を選んだ