診療内容

白内障手術症例集
多焦点眼内レンズ

杉並区50代男性 白内障手術症例#68 最強度近視(連続焦点型多焦点レンズ: テクニス シナジー TECNIS Synergy +5.0D使用)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.03(1.0)

    左眼
    遠見:0.03(0.8)

  • 術後

    右眼
    遠見:2.0p(2.0)
    近見:1.2(n.c.)

    左眼
    遠見:2.0(n.c.)
    近見:1.5p(n.c.)

2年前の区の緑内障健診に来られた方ですが、左目が見えにくくなってきたとのことで半年ぶりに再診されました。
両眼とも-15.0D程度の最強度近視でしたが、核白内障はそれほど進行しておらず、自覚症状どおり左眼優位な皮質混濁を認めました。左眼矯正視力は0.8程度に低下しておりましたが右眼はまだ1.0見えておりましたので、手術を強くは勧めず経過観察しておりました。しかしながら、自覚的な見えにくさの訴えが強く、適応あればぜひ多焦点レンズで、まずは左眼の白内障手術をしたいとご希望されました。

眼内レンズの作成されている度数範囲はレンズにより異なり、パンオプティクスをはじめとする通常のレンズは6.0Dからですので、28.77mmの長眼軸眼にもかかわらず角膜屈折度が45.0D程度と比較的大きいこの方に適するものはなく、5.0Dから作成されているテクニスシナジーを選択することになりました(ちなみにレンティスコンフォートやインテンシティは10.0Dからです)。

下図の右上のBarrett Universal II(BU II)式の結果からは、メーカーが推奨する目標屈折度が1番0に近い0.09Dである4.5Dのレンズがファーストチョイスとなりますが、4.5Dは作成範囲外ですので、-0.21Dの近視を残す5.0Dを選択することとなりました。ただしここで注意が必要なのは、5.0D以下のレンズは下図計算式では両凸でなく片凸レンズとして計算されてしまうため、5.5Dと5.0Dのレンズの目標度数の差が1.07-0.21=0.86Dもある点です(通常は0.30D程度です:詳しくは https://morohoshi-ganka.com/opeex/1118 参照)。

そこで念のため、AIを使用した新しい計算式であるKane式でも計算した結果が下図になります。こちらでは上記レンズ形状による問題点が改善され、5.5Dと5.0Dの目標屈折度の差もほぼ等差数列様の結果になっていることが分かります。

いずれにしても、このようにプロポーションが良くない眼球(長眼軸&高角膜屈折度)の場合は、上図のBUII式・SRK/T式・Haigis式の計算結果が一致していないことから分かるように、術後屈折誤差(度数ズレ)が生じてしまうリスクが大きくなります。そこで今回もORA Systemを併用して術中波面収差解析の結果でレンズ度数決定を行いましたが、4.5Dのレンズは存在しないため、場合によっては期待どおりの遠方視力が出ない可能性もお伝えしたうえで、近方・中間が見えれば遠方は眼鏡使用でも構わないとのことでテクニスシナジーでの手術をご希望されました。

下図が術中波面収差解析の結果ですが、ORA Systemによると、5.0Dのレンズ使用時の予想術後屈折度は-0.68となります。しかしながらテクニスシナジーを使用した際の当院での最適化の過程では、ORA Systemの予測値と実際の術後自覚屈折度には0.39Dの誤差(遠視化)が生じることが統計的に確認されておりますので、予測自覚屈折度は-0.68+0.39=‐0.29Dとなり、自信を持って5.0Dのレンズを使用することができました。

結果として、術後は両眼とも裸眼視力遠方はほぼ2.0近方も1.2以上の予想以上の視力に大変満足していただき、術後アンケートに書かれているように「悩みがなくなりました」と言われていた点が印象的であり私も大変嬉しく感じました。

テクニスシナジーはハロ・グレア・スターバーストといった異常光視症は比較的強いレンズですが、度数をピッタリ合わせてあげればとても広い明視域(ピントの幅)を得ることができるレンズです。しかしながら、パンオプティクスと比較して屈折度数のスイートスポットが狭く、度数ズレが生じた場合に視力が出にく傾向があると思われ、その点が術者側としては扱いがシビアな印象を与えるレンズでもあります。
これらの高機能レンズの性能を最大限に引き出すには、正確な術前検査・手術を行うことが必須であると考えますので、今後も妥協せず精度の高い手術を心掛けさせていただきます。患者様におかれましても、妥協せずご希望をお伝えいただければ、最大限ご希望に近い結果になるよう努力させていただきますのでお気軽にご相談ください。

2022.08.28

Q.手術前はどのような状態でしたか?

近眼で視力が0.01だった。
全体的にぼやけて文字が見えづらかった。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

パソコンの文字が見えづらい、誤字入力が増えた。

Q.手術中に痛みはありましたか?

痛みはほとんど無い。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

手元も遠くも良く見える(スマホも良く見える)

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

パソコン、スマホ、新聞、全て眼鏡無し。
老眼鏡も無しで快適に過ごせています。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

近くも遠くも眼鏡無しで生活したかったので、多焦点レンズを選んだ。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

勧めます。(自分ももっと早くしたかった)
悩みが無くなった。