スイス製 焦点深度拡張型多焦点レンズ:Lucidis (ルシディス) 導入のお知らせ
2年前の2022年前から、個人的にスイスのSwiss Advanced Vision(SAV-IOL)社にコンタクトして、Lucidis (ルシディス)という多焦点レンズの国内使用の認可を依頼しておりましたが、この度ようやく代理店が決まり、自由診療として導入できることとなりました。スイスで開発・製造された含水率26%の親水性アクリルレンズであり、クローズドループデザインの支持部を採用することで水晶体嚢の固定・安定性も良好であり、トーリックモデルもありレンズパワーも+5.0Dから作製され、乱視にも強度近視にも対応しています。
Lucidis (ルシディス)は下図のように回折格子を持たず、レンズ光学部中央わずか直径1mmに近方加入部分として、独自のEDOFテクノロジーであるインスタントフォーカスを採用しています。そのためハロ・グレアなどの不快光視現象をほとんと生じずに、遠方~近方まで連続した単焦点レンズとほぼ同様のクオリティの高い視機能を可能としています。
インスタントフォーカスとは、人間の水晶体の調節機能を再現することを目的としたSAV-IOL社独自の特許技術であり、そのテクノロジーにより、解像度と光の強度が一定なまま焦点深度を拡張しています。このレンズの中央にある非球面部分により生じた干渉光波は、Pseudo-Nondiffracting Beam(PNDB)と呼ばれ、Lucidis (ルシディス)では、このPNDBが連続的に近方から遠方まで視力をカバーするように計算されています。
中央の非球面加入部分の大きさは直径1mmとアイハンスよりも小さいですが、加入度数は+2.5~3.0D程度とVivity(加入+1.5~2.0D)よりも強いため、理論的にはアイハンスよりも少ない異常光視症かつ、Vivityよりも近くまで見えるレンズということになります。
上図はSAV-IOL社提供のDefocus Curveになりますが、遠方から33cmまで0.8以上の視力を実現していますし、実臨床においても下図のように同様に広い明視域が確認されています。
光エネルギー配分は3.0mm瞳孔径で遠方52%・中間25%・近方23%となりますが、近方加入部が中央にあるため、瞳孔が大きくなる暗所では遠方への光エネルギー配分が増えることにより、近方視力が低下しやすくなる可能性がある点は注意が必要です。この点は、同様に中央に近方加入部分を併せ持つ構造の、アイハンス・Vivity・ミニウェルレディにも当てはまります。
最後に参考までに、SAV-IOL社から提供いただいた、その他レンズとの比較の資料を掲載しておきます。
このたびSAV-IOL社のご厚意により、先着2眼に限り先行使用での手術が可能となっておりますので、ご興味がある方はお気軽に御相談ください。
なお、スイスからの輸入レンズのため、手術の4週間前にはレンズパワーを決定し発注する必要がありますのでご了承ください。