- 多焦点眼内レンズ
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国内初症例 武蔵野市60代女性 白内障手術症例#51 プログレッシブ型多焦点レンズ(右眼:MiniWELL ミニウェル・左眼:MiniWELL PROXA ミニウェル プロクサ)
3年ほど前に市の健診で白内障を指摘され近医受診していたけれども、この2~3ヶ月でますます霞みが進んだとのことで、手術相談で初診されました。
両眼とも皮質混濁を主体とした白内障であり、やや短眼軸眼でしたが軽度近視化をきたしており、遠方視力は0.6~1.0、近方視力は0.5~0.7程度と比較的良好でした。それでも術前アンケートでは多焦点レンズでの手術を希望され、車の運転を裸眼でできることを優先され、読書が趣味とのことでした。夜間運転機会もあり、シナジーよりはハログレアの少ないパンオプティクスの方が適しているかなと考えていたところ、新しいミニウェルであるミニウェルプロクサ(MinWELL PROXA)の使用が可能となり御提案したところ、是非!とご希望されました。国内では初めての使用であることと、世界的にもそれほど使用報告がない非常に新しいレンズであり、選定療養対象でなく自費診療になってしまうことを御了承のうえ手術となりました。
新しいレンズであり情報が少ないため、MiniWELLの販売を行っているSIFI MedTechのシンガポール社のスタッフと事前にwebミーティングを行い、使用レンズ度数を決定し、バックアップレンズを含めたレンズ発注を行いました。
優位眼にMiniWELL、非優位眼にMiniWELL PROXAを使用するWELL Fusion System®の推奨どおり、まずは優位眼(MiniWELL)から手術を行いました。手術自体はトラブルなく終了し、短眼軸特有の屈折誤差を考慮した目標度数設定を行ったため、術後の度数ズレはもほとんど生じませんでした。術後は裸眼視力で遠方1.5、近方40センチで1.5、30センチで0.8と大変良い術後視力に満足していただけました。
通常、片眼術後には「次に手術する眼のピントの位置を術後眼に比べてどうするか(同じにするか?やや遠方にするか?より近方にするか?)」相談して決めるのですが(staged implant)、MiniWELLを使用した優位眼ですでに遠近とも満足されていましたので、御相談のうえ、非優位眼のMiniWELL PROXAも遠方の見え方を犠牲にすることない度数設定を御了承いただき手術となりました。
私としてもMiniWELL PROXAを使用するのは初めてでしたが、いざレンズ挿入の際には、MiniWELLよりも中心のリング状の加入部分がやや目立つ構造をしていると感じ、術後にややハロが生じるのではないかと懸念されました。参考までに術後の診察時のレンズ画像が下図になりますが、右眼MiniWELLは単焦点と見分けがつきませんが、左眼MiniWELL PROXAは中心にリングを2つ認めます(やや散瞳不良)。
右眼:MiniWELL 左眼:MiniWELL PROXA
MiniWELL PROXAを使用した非優位眼の手術も問題なく終了し、術後検査では裸眼視力で遠方1.2、近方40センチで1.5、30センチでも1.5とPROXAのスペックどおりの良好な近見視力に大変満足いただきました。レンズのデザインから懸念されたハログレアなども左右差なくPROXA側も全く感じないとのことで、個人的には、これなら両眼MiniWELL PROXAでも良いのでは?と思いました。また、PROXAの焦点深度曲線では1mほどの距離の視力がやや弱いようでしたので、患者様に御協力いただき1mでの視力検査もしたところ、右眼MiniWELL眼が1.5、左眼MiniWELL PROXA眼が1.0とややMiniWELLに軍配が上がりましたが、患者様としてはその差は感じられていませんでした。「では左右で違いを感じる点はありますか?」と患者様にお伺いしたところ、「やはり左眼MiniWELL PROXAの方が、近くがとても良く見えます!」と言われていましたので、やはり近方を優先したデザインによる期待どおりの効果が現れており、MiniWELL PROXAの実力は本物であると実感されました。
参考までに近見30cmの視力表の一部を下記に掲載しましたが、携帯電話で当院ホームページを見た場合の文字の大きさは、だいたい0.15~0.2程度といったところでしょうか?ちなみに私には1.5のランドルト環は、小さすぎてホコリでも付いているのかと思いましたが、MiniWELL PROXAではコレが見えてしまうとは驚きでした。
30cm視力表とiPhone7 Plusの画面
30cm視力表の1.5のランドルト環と10円玉の比較
MiniWELL PROXAはまだまだ世界的にも使用症例が少ないレンズですし、本症例が国内初使用例であり、日本人に適した目標度数設定には経験とコツが必要かもしれませんが、MiniWELLで培われた技術が反映されていることはとても安心できます。30cmが見え、かつハログレアがほとんど無いレンズであることは大変特徴的ですので、今後希望者が増えるのではと思われます。御興味のある方は、お気軽に御相談ください。
2021.08.16
- Q.手術前はどのような状態でしたか?
夜の運転はライトが眩しくて避けていました。
本は老眼鏡無しでは読めませんでした。- Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?
遠近両用眼鏡が私には合わず、眼鏡の掛け外しがとても煩わしかったから。
- Q.手術中に痛みはありましたか?
痛いというより眩しくて、でも時間的にはあっという間に終わりました。
- Q.手術後の見え方はいかがですか?
読書の時、老眼鏡無しで読めるようになり、とても読書が楽しいです。
- Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?
老眼鏡を持たないで外出が出来るようになりました。外出先で老眼鏡を忘れて慌てる事がないのは嬉しいです。
家族の駅までの送迎も安心して出来るようになりました。
読書も手芸も眼鏡無しだと楽です。- Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?
以前より多焦点レンズで良いのがあればと探していました。理想的なレンズに巡り逢えました。
- Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?
手術を受けて、景色だけでなく前向きな気持ちになれました。
白内障の方にはお勧めします。