- 多焦点眼内レンズ
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三鷹市50代男性 白内障手術症例#55 強度近視(右眼:連続焦点型乱視用 テクニスシナジートーリック・左眼:テクニスシナジー レンズ入替症例)
半年前の検診で白内障を指摘され、右眼は霧視がひどく日常生活で不便を感じているとのことで、多焦点レンズでの手術のご相談で初診されました。
右眼は28.5mm、左眼は29.6mmもの長眼軸眼(強度近視)であり、強度近視特有の核白内障かと思いきや、右眼は瞳孔領まで進行した前嚢下と後嚢下混濁を伴う皮質白内障を認め、下図のとおりOPDで眼内部収差が測定できないほど白内障が進行し、矯正視力も0.15~0.2程度に低下しておりました。
術前のアンケートでは、優先度は近方・中間・遠方の順であり、夜間運転機会はごくたまにとのことでしたので、近見焦点距離が近いテクニスシナジーをお勧めさせていただきました。
角膜乱視は軽度でしたが倒乱視でしたので、手術切開による惹起乱視を含めた計算結果より、乱視用のテクニスシナジートーリックを用いての手術となりました。
右眼はやや散瞳不良でしたが手術は問題なく終了し、懸念された屈折誤差や乱視軸ズレも生じず、術後4日目の裸眼視力は遠方1.2~1.5、近方は1.0と非常に良好でしたが、御本人としては、「左眼はもっと近くが見えるようにして欲しい」とご希望されました。テクニスシナジーは近方にずらすと遠方視力が低下しやすいことをご説明させていただきましたが、それでもやはりさらに近方設定をご希望されました。
右眼術前スリット写真 右眼術前徹照写真
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右眼術後スリット写真 右眼術後徹照写真
左眼は角膜乱視も軽微であり、乱視用でないnon-toricのテクニスシナジーを用いての手術となりました。右眼同様にやや散瞳不良であるものの手術は問題なく終了しましたが、術後裸眼視力は遠方0.6~0.7/近方0.9と予想以上に遠方視力が不良な結果となりました。目標屈折度を近方よりにしたことはもちろんですが、おそらく眼軸長が左眼の方が1mm以上長いことによる術後屈折誤差の影響も考えられました。
術後1週間は左眼の度数変化を経過観察しておりましたが、遠くよりに変化することもなく依然として遠方視力が不良でしたので、患者さまにはレンズ入替という選択肢もあることと、入れ替えるなら2週間以内がベストであり、少なくとも1ヶ月以内なら比較的安全に入替可能だと御説明させていただきました。
御相談したところだいぶ悩まれていましたが、「右眼の見え方にも慣れてきて、より近くが見えるようになってきたため、やはり左眼の遠方の見えにくさの方が気になる。可能であれば入替を希望したい!」とのことでした。患者様の眼に2度目のメスを入れることになりますので、今回は必ず満足していただくために、どの程度度数を遠方にずらせば近方視力を犠牲にせずに遠方視力を向上できるか、数種類コンタクトレンズを装用してシュミレーションしていただき、ベストな「ずらし幅」を探り、入れ替え用のレンズ度数を決定しました。
入替手術で1番不確定な要素は、レンズと水晶体嚢の癒着の程度です。無理にレンズを引き剥がせば水晶体嚢を破損してしまい、新しいレンズも入れられなくなります。この方の場合は術後2週間と早期での入替でしたので、新たに切開創作成せずに前回の手術時の創口を利用し、スムーズに癒着も解除することができ、下図のように既存レンズを切断摘出して新しいレンズに入れ替えることができました。
レンズ切断 ⇒ 摘出 ⇒ 無水晶体状態
術後はシュミレーションどおり、裸眼で遠方1.5/近方1.0と良好な視力に大変満足いただき、「入れ替えして本当に良かった!」と言っていただけました。術後1ヶ月目には右眼の視力は遠近ともさらに向上し、「そもそも左眼を近方設定にしなくても良かったですね」とも言われていました。
入替手術は術後長期間経過してしまうと通常の白内障手術よりもリスクが高くなりますが、術後早期であれば比較的安全に入れ替えることができます。術後間もない時期に入替を決意されることはなかなか難しいとは思われますが、度数変更で改善するのであれば、不必要に時間が経過しないうちに、ためらわずに主治医にご希望をお伝えすることをお勧めします。引き続き当院では、希望を伝えやすい環境作りを心がけて診療させていただきます。
2021.10.31
- Q.手術前はどのような状態でしたか?
右眼は特に霞んだ状態であまり見えなかった。
- Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?
特に右眼は日常生活に支障があった為。
- Q.手術中に痛みはありましたか?
手術中にたまにチクッとした痛みはあった。
- Q.手術後の見え方はいかがですか?
遠くも近くも見えるようになった。またコントラストも良くなった。
- Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?
PCでの仕事や読書がしやすくなった。
眼鏡・コンタクトの煩わしさから解放された。- Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?
眼鏡・コンタクトレンズがほぼ不要になる為、多焦点レンズを選んだ。
- Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?
勧めます。
ホームページでの症例集は参考になりました。