診療内容

白内障手術症例集
単焦点眼内レンズ

神奈川県横浜市40代女性 白内障手術症例㊿(強度近視・片眼:乱視用単焦点レンズ)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.03(0.2p)

  • 術後

    右眼
    遠見:0.4p(1.5)
    近見:1.2 (n.c.)

こちらも40代の方ですが、単焦点レンズを選択された片眼手術の症例です。
1年ほど前に他院で右眼の白内障を指摘されていましたが、視力低下が進み3つにぼやけて見えることによる手術相談と、強度近視による眼底病変がないか心配で初診された方です。下図のOPD scanⅢの右側上段の像からも、視力低下だけでなく、3つにブレて見えている原因は白内障であることが確認できます。

右眼の白内障は、下図のように核硬度はgrade 4に近い進行した核白内障であり、-10Dを超える最強度近視をきたしていました。また、眼軸長は両眼とも28mmを超える長眼軸長眼でしたが、心配されていた緑内障や網膜疾患は認めませんでした。

左眼も-8.5D程度の強度近視とgrade2程度の核白内障は認めましたが、矯正視力は1.2と良好でしたので、御本人のご希望もあり、まずは右眼のみの手術となりました。片眼手術ではありますがハードコンタクトレンズ使用者でしたし、白内障手術をうけるには40代と比較的若く、上図OPD scanⅢの左側下段の角膜高次収差も小さい方でしたので、選択肢として多焦点レンズでの手術もご提案させていただきました。しかしながら、術前アンケートでご自身を完璧主義で細かい性格だと分析されており、ご相談のうえ単焦点レンズでの手術となりました。

強度近親の方の片眼手術で問題になることは、焦点をどこに合わせるかということです。この方の場合の選択肢は、①左眼コンタクトレンズ装用状態と同様に遠方②左眼裸眼状態に近い-6D程度の近方③読書距離:30~40cmの-2.5D程度の3つになります。①③のデメリットは術後左右差により眼鏡矯正が完全にはできないことであり、②のデメリットは強度近視を治せるチャンスを放棄することとなります。上記ふまえ御相談したところ、手元の視力は確実に確保した上で、せっかくなら室内生活は右眼裸眼で生活できるようにと近方~できれば1m程度までが見える度数を希望され、③よりやや遠方の-2.36Dを目標屈折度としてレンズを選択されました。また、1.75D程度の角膜乱視もあり、なるべく裸眼視力が良くなるように乱視用レンズを用いての手術となりました。

かなり硬い白内障ではありましたが、核の大きさはそれほどでもなく、強度近視眼特有のチン氏帯脆弱も問題になる程度ではなく、手術は無事に終了しました。

術後は懸念された屈折誤差もなく、他覚屈折値で-2.375D、自覚屈折値では-1.625Dとなり、裸眼遠方視力も0.3~0.4と予想以上に良好であり、室内ではおおむね裸眼で生活できるようになったと大変喜んでいただきました(術前強度近視でない方はこのくらいの屈折値ですと遠方視力は0.1~0.15程度のことが多いです)。

事前の手術説明で、乱視用レンズは稀ですが術後の回転リスクもありその場合は整復が必要とお話したところ、それならば乱視用でないレンズをご希望されたりと、ひとつひとつに迷われ、1度手術を延期したりしての手術でしたが、結果としてご満足いただき、術後はご自身の選択に間違いはなかったようで、吹っ切れたように明るくなられていたのが印象的でした。

最近は単焦点・保険適応の低加入度多焦点レンズ・選定療養適応多焦点レンズ・自由診療多焦点レンズと、選択しなければいけないレンズの種類も多く、術前にいろいろと迷われるかと思いますが、この方のように単焦点レンズでも充分満足した結果を得ることはできますので(術後落ち着けば遠近両用コンタクトレンズの装用もできます)、やはり御自分の優先度を明確にされてからの手術をお勧め致します。

2021.07.07

Q.手術前はどのような状態でしたか?

物が二重・三重に見える。視力低下。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

日常生活に支障が出ていたから。

Q.手術中に痛みはありましたか?

ほとんど感じませんでした。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

物が二重に見えたりする状態がなくなり、とてもくっきり見えるようになった。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

もともと強い近視で家の中でも眼鏡(コンタクト)必須だったが、家の中では裸眼で過ごせるようになった。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

日常生活で近くを見る作業が多いことと、多焦点レンズのハロー・グレアが気になった為、単焦点レンズを選んだ。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

はい。日常生活に支障がでていたら、早めにした方が良いと思いました。