- 多焦点眼内レンズ
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練馬区60代女性 白内障手術症例㊹(強度近視+核白内障・乱視用3焦点眼内レンズ:パンオプティクス・トーリック)
-9.0D程度の強度近視にてソフトコンタクト使用者ですが、遠方も近方も見えにくいとのことで白内障手術相談にて初診された方です。両眼ともgrade3程度の核白内障に加え皮質混濁もきたしており、右眼の全乱視は測定値で4.0Dを超えていました。
角膜形状解析では1.0D程度の角膜倒乱視でしたので、白内障由来の残りの3.0Dの水晶体乱視は、白内障手術だけで取り除ける計算になります。ただし、この方はコンタクトレンズや眼鏡依存度を減らしたいとのことで3焦点型の多焦点レンズをご希望されましたので、多焦点レンズの効果を最大限に引き出すために、乱視用のパンオプティクストーリックをお勧めさせていただきました。
強度近視特有のチン氏帯脆弱でしたが手術は問題なく終了し、術前0.05/0.08であった遠方裸眼視力は両眼とも1.2と大幅に改善され、ご希望どおり近方裸眼視力も1.2と良好であり、コンタクトレンズなしで生活できることに大変満足していただけました。ちなみに、手術よりも術野のドレーピング(シール)をはがす時の方が痛かったと言っていただけるのは術者冥利に尽きます。
同業者の方からも強度近視の方の目標屈折度をどのくらいに設定するべきか質問を受けることがありますが、こちらはやはりstaged implant(片眼の術後の結果により、もう片眼の目標度数を決定すること)と、患者様の個人的な希望にあわせることが重要と思われます。この方は、細かい図面などを見るお仕事をされており、近見優位を希望されましたので、まずは右眼を-0.5D程度の近方よりに合わせたところ、もう片眼はさらにもう少し近方を見たいと希望されたので、通常あまり選択しない、かなり近方優位の-0.75D~-1.0Dとさせていただきました。結果として、術後屈折度の測定値では右眼-0.625D,左眼-0.875Dの近視眼となりましたが、近見視力はもちろんのこと、遠方視力も裸眼で両眼とも1.2まで見え、自覚屈折度は両眼とも-0.375となりました。
全ての方に当てはまるわけではありませんが、このように強度近視の場合、他覚屈折度と自覚屈折度にかなりの差が生じる症例が少なくありません。患者様にとって最良の視機能を提供するためには、目標屈折度設定では自覚屈折度を考慮し、詳細な聞き取りにより個々のライフスタイルに対応することが必須と思われます。
- Q.手術前はどのような状態でしたか?
だんだん手元が見えにくくなっていた。
- Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?
手術を受けた方達が、簡単に終わって明るくなると聞いていたから。
- Q.手術中に痛みはありましたか?
注射より痛みは無かった。
まぶたのシールをはがす時の方が痛かった。- Q.手術後の見え方はいかがですか?
小学生から近視だったが、眼鏡もコンタクトレンズも術後は必要が無くなった。
更に近くの細かい文字も見やすくなった。
寝る前のボヤッとした見え方の時間が無くなった。- Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?
図面等を見る事が多く、年代的に細かい文字は眼鏡の人が多い中、煩わしさが無くなった。
- Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?
眼鏡やコンタクトレンズから解放される事は素晴らしいので、多焦点レンズを選んだ。
- Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?
もちろん多焦点レンズを勧めます。
早い方がお得です。