診療内容

白内障手術症例集
多焦点眼内レンズ

杉並区60代女性 白内障手術症例⑭ (レーシック後・焦点深度拡張型多焦点レンズ:テクニス シンフォニー)

  • 術前

    右目
    遠方:0.6(1.2)

    左目
    遠方:0.4(0.7)

  • 術後

    右目
    遠方:1.2(1.5)
    近方:0.7(1.0)

    左目
    遠方:1.2(1.5)
    近方:0.7(1.0)

レーシック(LASIK)後に核白内障による近視化を生じ、多焦点レンズによる白内障手術をご希望された方です。LASIK前は近視のほかに高度角膜乱視があったようですが、術後の戻りも少なく比較的きれいな角膜形状を呈していました。
角膜が削られているLASIK眼では、角膜屈折度を使用する通常の眼内レンズ度数計算式では術後屈折誤差(遠視化)を生じてしまうため、アメリカの学会が推奨する複数のLASIK眼専用の計算式を使用してレンズ度数を決定することが一般的です。それでもやはり目標どおりにいかない症例もありますので、当院では上記計算式のほかに、wave-front(波面収差)アナライザーであるOPD-ScanⅢによる角膜形状解析結果を参考に度数決定をしています。
測定機器の進歩により、眼内レンズ度数決定因子のひとつである眼軸長の測定精度はかなり高くなった一方で、角膜屈折度の術後屈折誤差への影響が大きくなってきたように感じます。当院で使用しているOPD-ScanⅢは角膜中央部分の3000ポイント以上の屈折度を測定することができますので、その屈折度を用いて、予測精度が高いと報告されているCamellin-Calossi式により度数計算をしています。また連続的にピントが合い、ある程度の乱視矯正効果も併せ持つ焦点深度拡張型(EDOF)レンズはLASIK後の方にも比較的向いているレンズと思われますので、この方もEDOFレンズであるテクニスシンフォニーでの手術となりました。
本症例の方はLASIKの術前データも持参されていたため、より高い精度で目標どおりの屈折度を得ることができ、近見も裸眼両眼視で1.0の視力で大変喜ばれておりました。白内障は老化により皆なる病気です。法律的なカルテの保存期間は5年になりますので、LASIKをされた方は可能なうちにLASIK前のデータを入手されていた方が良いかと思います。
LASIK眼の眼内レンズ度数計算式も日々アップデートされ精度が上がっており、最近ではAI(人工知能)を利用したものもでてきています。それでもやはり完璧なものはありませんので、複数の計算結果を参考にして度数決定を行うのが安全かと思われます。2008年のピーク時には45万件のLASIKが行われており、LASIK眼の白内障手術は確実に増加する見込みですので、今後とも患者様の術後満足度を高めるために最新の知見を取り入れつつ診療にあたって行きたいと思います。

Q.手術前はどのような状態でしたか?

夜間や美術館、博物館の館内で視力が出ず、外出を控える程。特に左眼が遠近ともにぼやけていた。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

自分の体調を良い状態に戻したいと思ったので。

Q.手術中に痛みはありましたか?

痛みはほとんど無かったが、視線を一ヶ所に留めておくのが難しい場合があった。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

遠方が本当にくっきりで、夜間も良く見えるようになった。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

世界が美しいと感じ、特に新緑時だったので良く見えて嬉しかった。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

優秀な医学の進歩に恩恵を感じ自分でも確かめたかったので、多焦点を選んだ。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

もうすでに30人以上に自慢している。良い先生と医院の巡り逢いに感謝。