診療内容

白内障手術症例集
多焦点眼内レンズ

茨城県守谷市50代男性 白内障手術症例#72 最強度近視:遠方合わせ(分節状屈折型2焦点レンズ:レンティスコンフォート)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.02(0.7)
    近見:(0.6)

    左眼
    遠見:0.02(1.2)
    近見:(1.0p)

  • 術後

    右眼
    遠見:1.5p(1.5)
    近見:1.2(n.c.)

    左眼
    遠見:1.5p(1.5)
    近見:1.2p(1.2)

3年前から白内障を指摘されており、手術相談にて初診された方です。
茨城県からお越しの方で、①夜間運転機会あるためハログレアが少ないこと、②仕事で使用のパソコンは裸眼で見たい、③ゴルフでは遠方見たいけれどもコンタクトレンズ併用でも構わないと、初診時からご自分の希望を具体的に提示されました。すでに近医眼科も手術のために受診されているとのことであり、当院はセカンドオピニオン的に受診されたようですので、初診時は白内障の程度分類・手術のリスク評価・白内障以外の眼疾患のスクリーニングを行い、当院での手術ご希望であれば再診とさせていただきました。
その後1ヶ月ほど経過して再診され手術予約をされましたので、再度レンズの種類と目標度数についてご相談しました。両眼とも26mmを超える長眼軸に加え、進行した核白内障により術前屈折度は右眼-13.5D・左眼-11.5Dの最強度近視でした。信号の矢印が3本に見えるという訴えどおり、術前のOPD scanIIIでの波面収差解析では(下図参照)、両眼とも白内障による内部高次収差が0.610/0.463μmと高値でしたが、角膜高次収差は低値かつ他の眼疾患もないため通常の多焦点レンズも選択肢として可能な眼であることをご説明させていただきました。

しかしながら、夜間運転機会もありハログレアなどの異常光視症が少ないことを優先されましたので、単焦点レンズアイハンスレンティスコンフォートの3択で迷っていただくこととしました。

ご本人は強度近視眼特有の焦点深度の深さを期待しておられましたが、そちらは不確定要素であるため、最初からその点を期待してレンズ選択をするべきではない旨ご説明し、まずは確実に裸眼で見たい距離を優先して目標度数設定することをお勧めさせていただきました。その結果、最初のご希望とは変わり、近方は老眼鏡使用は構わないから裸眼で遠方が見えるような目標度数設定にて、レンティスコンフォートでの手術をご希望されました。
もともと強度近視の方に、加入度+1.5Dレンティスコンフォート遠方合わせで使用すると、これまで見えていた30cm程度の手元が見えにくくなる可能性が高いため通常はお勧めしておりません。この方はその点を十分ご理解いただいたうえで、上記①②③の全てのご希望を叶えられる可能性を残し、まず右眼は遠方1.0以上は見え、パソコン距離の50cmは確実に見え、40cm程度もまあまあ見えるように、遠方2.0m=屈折度-0.5Dを目標とすることとしました。レンティスコンフォートは加入度数+1.5Dですから、1.5D+0.5D=2.0D→1/2.0D=0.5m=50cmが近方焦点の理論上の限界点となります。そこに0.5~1.0D程度の偽調節が加わり40cm程度は十分識別できるだろうとの予測に基づき手術となりました。

右眼は硬く進行した核白内障でしたが超音波による水晶体摘出は問題なく終了し、術中波面収差解析装置であるORAシステムを使用して最終的に度数選択を行いました。長眼軸のわりに角膜が急峻である(角膜屈折度が大きい)ため術後屈折誤差が懸念されましたが、目標通りの屈折度となり、患者様の期待していた強度近視特有の焦点深度の深さが発揮され、遠方はもちろん近方視力も良好であり、遠近とも1.2の裸眼視力に大変喜んでいただけました。しかしレンティスコンフォート通常術後経過とともに軽度遠視化することが報告されておりますので、その点も考慮して左眼の目標設定を検討していただくこととしましたが、この方は逆に術翌日に比べわずかに近視化してきました。それでも遠方裸眼視力は1.2以上でしたので左眼の目標度数設定を相談したところ、近方の見え方は十分なので、両眼加算効果を期待し右眼と同様もしくはむしろやや遠方合わせをご希望されました。

左眼も同様にORAシステムを使用して術中にレンズ度数決定を行い、結果として0.12D程度遠方合わせの度数を選択しました。眼内レンズは通常0.5D刻みで作成されているため小数点以下まで同じ屈折度にすることはできませんが、その違いは体感できるレベルではありません。術後屈折度はご希望通り右眼よりもわずかに遠方となり、裸眼遠近視力1.2という期待通りの結果に大変満足していただけました。

レンティスコンフォートは上下分節状屈折型2焦点レンズですが、その固定向きは縦でも横でも視力には影響ないと報告されております。実際に角膜倒乱視の方に乱視用レンズを使用する際は横向きに固定します。一方で、近方を見る際には近見反射といい眼球はやや寄り目(輻輳)になりますので、当院では少しでもレンズ下方の近方部分を使いやすくするために、瞳孔に偏位がない方には上図のように下方近方部分がやや鼻側に位置するように若干斜めに固定し、乱視用レンズを横向きに挿入する際には必ず鼻側に近方部分がくるように固定しております。近方部分を耳側に固定しても近見視力に影響はなかったとの報告もありますので、向きにこだわることは全く意味がないかも知れませんが、少しでも患者様がレンズの機能を最大限に活かしやすい状態にできればと考えて手術しております。

最後に加入度数についてですが、加入度数と焦点距離の計算方法を簡単に示すためにレンティスコンフォートの加入度数は+1.5Dなので近方加入度数は1/1.5m=66cm程度と説明することが多いですが、眼内の度数と角膜面での度数は異なります。通常眼内の度数の70~80%が角膜面での度数となります。つまり1.5D×0.7~0.8=1.05~1.20Dが角膜面での加入度数となるため、実際の近方焦点距離は1/1.05~1.20=95~83cm程度という計算になります。加入度数+3.25Dクラレオン・パンオプティクス近方焦点距離が1/3.25D=31cmでなく40cmであるのもこのためですし、テクニスマルチフォーカル+4.0D近方焦点距離が25cmでなく30cmであることもご理解いただけると思います。これは乱視矯正にも当てはまりますので、例えば1.0Dの角膜乱視を矯正するためには、乱視軸にもよりますが約1.5Dの乱視用眼内レンズを使用する必要があります。

今回は少々細かい話になりましたが、このように加入度数から計算した理論的な近方焦点距離よりも、実際はより近方まで「見える」と感じる方が多いのは、瞳孔径や角膜乱視などによる偽調節に加え、術前の白内障や屈折度数により「見える」の感覚的な基準が人それぞれ異なるからだと思われます。患者さまの期待に応える結果を出すためには、正確な手術を行うことはもちろんですが、その「感覚的な基準」を術前にしっかりと把握しておくことも非常に重要と当院では考え術前検査をしております。患者様もご自分の「見える」と感じるレベルを具体的に把握されることをお勧め致します。

Q.手術前はどのような状態でしたか?

物が二重三重になり見えづらかった。
信号の矢印が三本に見えた。
眼鏡店で矯正が不可能と言われ、眼科での診療を勧められた。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

白内障の診断を受け数年経過し、いよいよ見えづらくなった為。

Q.手術中に痛みはありましたか?

ほとんど無かった。
眩しさだけで、じっと同じ点を見続けているのが少し大変だった。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

明るくなった。電球色の世界から昼白色の世界になった。
現在は少し青味が強すぎるとも思う。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

事務職でパソコンを利用するが、顔を近づけなくても良く見えるようになった。
日常生活は眼鏡無しで過ごせている。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

保険診療で選択出来て、ハログレアが少なくコントラストもあまり落ちないと聞いたのでレンティスを選んだ。
単焦点も考えたが、明範囲が少しでも広くなるようにと思った。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

ホームページでの症例の紹介が充実していたので。
強度近視なのですが、対応例や特徴が紹介されており参考になると同時に安心感があった。