診療内容

白内障手術症例集
単焦点眼内レンズ

小金井市70代女性 白内障手術例#71 元アナウンサー(単焦点レンズ:軽度モノビジョン)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.7(0.9)
    近見:0.3(0.9)

    左眼
    遠見:0.2(0.9)
    近見:0.3(0.9)

  • 術後

    右眼
    遠見:1.0(1.2)
    近見:1.2(n.c.)

    左眼
    遠見:1.2(1.5)
    近見:0.7(1.2)

10年前から白内障と診断され点眼加療をされていたとのことですが、見えにくさが増悪したため手術を決心されたようで、近隣総合病院眼科より手術依頼にて紹介初診された方です。

元アナウンサーであり、現在も講師としてご活躍されており、手元の原稿も見たいし遠方の生徒さんの顔も見たいとのことで、多焦点レンズでの手術をご希望されました。

診察時は白内障進行と老眼による屈折変化のため、右眼軽度近視(-0.625D)・左眼遠視(+2.375D)の状態であり、裸眼遠方視力は右眼0.7/左眼0.2の状態でしたが、お話を伺うと白内障になる前は、もともとは右眼で手元を見て、左眼で遠方が見えていたので眼鏡を使用していなかったとのことでした。

角膜高次収差も低値で多焦点レンズも適応ある眼でしたが、それならば、わざわざ高価な多焦点レンズを使用せずとも、白内障になる前の状態に戻してあげるだけで満足していただけると思われましたので、単焦点レンズでのモノビジョンをご提案し同意していただきました。念のため術前の近見裸眼視力を測定したところ両眼とも0.3と不良でしたが、現在も読書なども老眼鏡使用していないとのことでした。そのレベルであれば、なおさら単焦点でも術前以上の遠近視力が期待でき、きっと満足していただける結果にできる確信があったことと、未だ中心窩形成は良好ですが、左眼優位な軽度網膜前膜も認められたことも単焦点レンズをお勧めした理由の1つです。

術前検査では右眼の方が左眼より1mm長い眼軸長でしたので、当然右眼を近方左眼を遠方設定とし、術後の左右差が増大しないように遠視眼になってしまっている左眼からの手術としました。また、どちらも小瞳孔でしたので、通常よりも焦点深度が深い可能性が予想されましたので、まず左眼はしっかりと遠方確保するため‐0.37Dを目標屈折度と設定しました。

左眼術中は、術後屈折誤差軽減のためだけでなく、右眼手術時に正確な左右差をつけらるように波面収差解析装置(ORA system)を使用し、手術は問題なく終了しました。
術後は-0.375Dとほぼ屈折誤差ゼロとなり、裸眼遠方視力1.2と期待通りの見え方に満足いただきました。しかもご本人的には近くも眼鏡なしで右眼よりもよく見えるとのことで、裸眼近方裸眼視力を測定すると0.7と単焦点遠方合わせにしては良く予想以上に良く見えておりました(個人差ありますが通常は0.3程度)。

そこで右眼控えめなモノビジョンを提案させていただき、左眼にどれだけ近方加入すれば楽に手元が見えるか測定したところ、左眼よりさらに瞳孔径が小さいこともあり約+1.0D加入するだけで楽々近方視力1.0見えると分かりましたので、右眼は-1.28Dを目標屈折度としました。

もし左右まったく同じ度数のレンズを使用すれば、もともとの眼軸長の差による屈折度の差が再現できることになります。その場合はこの方の右眼は‐3.23狙いとなり、左右差約3.0Dの文字通りのモノビジョンだったことが推測され、そのレベルまではおそらく適応できるはずです。しかしながら、そこまで左右差つけずとも満足できるのであれば不同視にならず、必要時は眼鏡装用できる範囲である左右差2.0D以内に抑えてあげたいと思い目標屈折度設定をしました。

右眼もORAシステムを使用し、正確に適切な左右差をつけることができましたので、術後屈折度は-1.375Dとなり、左眼でのシュミレーションどおり、右眼の術後裸眼近方視力1.2となりました。さらに小瞳孔残存乱視による偽調節も加わってか、遠方視力1.0と予想以上に良好な結果となり、お仕事も日常も眼鏡なしで生活できると大変喜んでいただけました。

よく「術後どれくらいの視力がでますか?」と聞かれますが、ほかの眼病がなく遠方ピッタリ0D狙いの方であれば通常1.2が期待できますが、-1.0Dの近眼にした場合の術後裸眼視力は予測ができません(通常0.6-0.7程度)。それは角膜乱視瞳孔径などの諸条件により焦点深度が人それぞれ異なるからです。ですので、その人なりの満足できる度数は、その人の眼でシュミレーションしてみるのが1番確実性が高いと考えられます。

モノビジョンは誰もが適応できるわけではありませんが、この方のように小瞳孔の方は、その点考慮してstaged implantによる左右度数選択をすることで、左右差を最小限に抑え、両眼視機能(立体感)を損なわず満足できる遠近裸眼視力を得ることができる可能性があります。屈折矯正白内障手術は、左右差のデメリットをメリットに変えるチャンスでもありますので、左右差に悩まれている方はお気軽にご相談ください。

2022.09.24

Q.手術前はどのような状態でしたか?

眼球の上に白い濁りが被さってきて、効き目の右眼が見えづらくなった。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

潮時だと感じたため。
また通院していた○○病院の先生にこちらのクリニックを紹介して頂いたので。

Q.手術中に痛みはありましたか?

しみたり、チクッとした痛みは感じた。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

遠くから手元の小さな文字までクリアに大変よく見えるようになった。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

元アナで現在は声優志望の若者達を対面で教えたり、オンライン(ZOOM)での話し方教室講師で教材を見せたり、一緒に読んだりが楽に出来るようになると思う。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

先生の勧めと値段を考えて、またモノビジョンの眼だったので単焦点でも見えるのではと思い選んだ。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

○○病院で紹介頂いたのでこちらを選びました。
世の中が何倍も明るくなって、ピカピカ光り輝いて見えるようになるのでお勧めします。