診療内容

白内障手術症例集
多焦点眼内レンズ

杉並区50代男性 白内障手術症例#73 前嚢線維化&長眼軸眼(右眼:3焦点型多焦点乱視レンズ:クラレオン・パンオプティクストーリック 左眼:クラレオン・パンオプティクス)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.4(0.6)
    近見:0.5p(0.9)

    左眼
    遠見:0.1(0.4)
    近見:0.6p(id)

  • 術後

    右眼
    遠見:1.5(n.c.)
    近見:1.2(n.c.)

    左眼
    遠見:1.5(n.c.)
    近見:1.2(n.c.)

半年前に健診で白内障疑い指摘され、他眼科受診し白内障診断。その後、紹介状なく当院での手術希望にて初診された方です。
両眼とも核硬度は1.0程度ですが、前嚢線維化を伴う皮質白内障であり、左眼は瞳孔領がほぼ真っ白になっており、下方に一部局所的な強い混濁もあり、眩しさで診察時の開瞼も困難な状態でした。


また、このような状態になってしまうと屈折検査も正確に行えず、下図のように屈折値は遠視にでたり近視にでたりと、全く信用できなくなります。

年齢と白内障のタイプから通常の加齢性のものではないことが明らかでしたのでお話を伺うと、中学生時に左眼にテニスボール外傷の既往があるとのことでした。もちろん外傷性白内障の要素もありますが、右眼にもすでに同様な前嚢下混濁をきたしており両眼性でしたので、全身的な関与も考えられましたが、アトピー性皮膚炎ではないとのことでした。いずれにしても普通の白内障ではなさそうなので、安全策で単焦点レンズを希望して欲しいと内心考えていましたが、ご本人は「ゴルフが趣味運転は月1回程度だが、会計の仕事をしているので細かい文字パソコンをよく見たい」、とのことで多焦点レンズをご希望されました。。。
眼軸長は両眼とも26mを超える長眼軸ですが、強度近視ではなく屈折度は-1.5D程度の軽度近視でしたので検査結果を見直したところ、近視が打ち消されているのは白内障タイプの他に、角膜屈折度41Dとかなりフラットな角膜形状をしているためでした(平均角膜屈折度は43D)。
この方のように標準的な眼球プロポーションをしていない方は、眼内レンズ度数計算でも術後屈折誤差も生じやすくなりますので、遠方ピッタリを狙う必要のある多焦点レンズでの手術はなかなか難しいところがあります。

しかしながら、「母親が2焦点レンズでの手術を受けている」とのことで多焦点レンズでの手術希望の意志は固く、適応検査に関してはOPD scanでの角膜高次収差は低値であり、明らかな緑内障や黄斑部疾患は認めませんでしたので、残念ながら?多焦点レンズでの手術を回避する理由は見つかりませんでした。ゴルフで遠方仕事でパソコン裸眼で行いたいとのことで、身長も平均以上で小柄ではない方でしたので近見希望距離も近すぎるものではないため、ご本人も興味を持たれていたクラレオン・パンオプティクスでの手術となりました。

このような前嚢線維化を伴う白内障手術は、前嚢切開線上にまで線維化が進んでいるとリスクが高まると考えますが、この方はちょうど中心5.5mmの部分に良い感じに線維化をしていない部分がありましたので(上図青〇)、VERIONイメージガイドシステムで無事に前嚢切開を行うことができました(青△)。デジタルガイドを使用することでサイズ・形状とも正確に前嚢切開することに努めておりますが、フェムトセカンドレーザー白内障手術(FLACS)では、この工程をレーザーで行うため真円の前嚢切開が作成できる点がメリットです。その点では私のマニュアルでの手術はレーザーの正確さに確実に負けますが、現在のところ術後視力の差につながるとは考えられておりません。

その後、下方の混濁も水晶体嚢を傷つけることなく無事剥離・除去することができ、屈折誤差回避のためORAシステムを用いて術中波面収差解析を行いレンズ度数を決定しました。フラットな角膜でしたので遠視化するリスクを考慮しても、下図左側の術前データによる計算結果では14.5Dかなと考えておりましたが、下図右側の術中波面収差解析の結果では、14.5Dでは術後屈折度0.00Dと予測しており、経験上それでは遠視化するリスクが高いと考え0.5D強いパワーの15.0Dレンズ(術後予測屈折度-0.32D)を選択しました。

そして最後に多焦点レンズの機能がきちんと発揮されやすいように、レンズの中心をしっかり合わせて手術を終えました。

術後は懸念された屈折誤差も生じず、ちょうど屈折度ゼロになり、裸眼にて遠方1.5/近方1.2の大変良好な視力に喜んでいただけましたが、ORAシステムを使用し術中波面収差解析をしていなければ、おそらく14.5Dを使用して遠視化していたはずですので、今回はORAシステムに助けられたことになります。

 

右眼の前嚢線維化は左眼ほど進行しておりませんでしたが、術前矯正視力が0.6まで低下しておりましたので、予定通り手術をご希望されました。右眼は軽度角膜倒乱視がありましたので、乱視用クラレオン・パンオプティクストーリックを用いて手術を行い、左眼と同様にORAシステムを使用してレンズ度数選択乱視軸調整を行い、術後は裸眼にて遠方1.5/近方1.2の良好を得ることができ、ゴルフお仕事の小さい数字も裸眼で良く見えると大変満足いただけました。

ちなみに会計士の方で当院で多焦点レンズをご希望され手術された方は複数名おられますが、なぜだか男性は全員パンオプティクス女性テクニスシナジーを選択されております。やはり男性は運転やゴルフなどアクティブな方が多く遠方の見え方を優先されるためか、パンオプティクスを選択される傾向があり、女性は身長(腕の長さ)の影響により近見希望距離が男性より近いことや、料理などの近方距離を重視されるためか、テクニスシナジーを選択されることが多いのかなと感じております。

最後に、上図の眼底写真の視神経乳頭の変化から緑内障が疑われるかも知れませんが、術前後のOCTによる神経線維層の検査結果が下図になります。下図左側の術前の結果を重視すると、神経線維が菲薄化している赤い部分が多く、緑内障リスクがあるため多焦点レンズは不適応か?と判断される可能性がありますが、下図右側の術後の結果では赤い菲薄化部分はなくなりほぼ正常となっています。白内障手術後に神経線維層が回復して厚くなることはありえませんので、術前の検査結果は、OCTの近赤外線シグナル強い白内障により減弱してしまい、本来の結果より悪く測定されてしまっていることになります。このように白内障があることで眼底病変の正確な診断も困難になり、適切な治療ができなくなるリスクもありますので、我慢しすぎずに適切な時期に手術を受けられることをお勧めいたします。また、多焦点レンズの適応に関しては、視野検査などの多角的な検査結果で総合的に判断することはもちろんですが、このような測定機器のアーチファクトも考慮する必要があると思われますので、レンズ選択に悩まれている方はお気軽にご相談ください。

2022.12.18

Q.手術前はどのような状態でしたか?

視界が全体的に霞みがかかり、文字が読みづらくなった。
標識も見えづらくなり、運転にも支障が出るようになった。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

両親が手術を受けており勧められた。

Q.手術中に痛みはありましたか?

全く無かった。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

見え方良好。色がハッキリ見えるようになった。赤や青がこんな色だったのかと思った。
日の丸を見て感動した。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

公認会計士をしているが、小さい字を見る機会が多く、仕事の能率が向上した。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

眼鏡の必要ないようにしたかった。ゴルフもするので遠い距離も見えるようにしたく、多焦点を選んだ。

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

術後の視力は繊細なレンズの配置が重要であり、最先端設備が充実している当院がお勧めです。