診療内容

白内障手術症例集
多焦点眼内レンズ

静岡県静岡市60代女性 白内障手術症例#70 遠視眼 WELL FUSION System®(右眼:ミニウェル・レディ/左眼:ミニウェル・プロクサ)

  • 術前

    右眼
    遠見:0.9p(1.5)
    近見:0.3p(1.0)

    左眼
    遠見:0.2(n.c.)
    近見:0.09p(0.1)

  • 術後

    右眼
    遠見:1.5(2.0p)
    近見:1.2(n.c.)

    左眼
    遠見:1.5p(1.5)
    近見:1.2(n.c.)

多焦点レンズでの白内障手術相談にて静岡市より紹介状持参で初診された方です。
前医含めると当院で4件目とのことであり、角膜不正乱視があるため「多焦点レンズは向かない」と言われたため、再度当院でも適応有無の判断をご希望されての受診でした。

下図、波面収差計OPD scanⅢの結果から分かるように、角膜高次収差は0.183/0.274 µmと思ったよりも低値でしたが、角膜球面収差は0.377/0.412 µmとやや高値であり、自動判定でも円錐角膜疑いが70%を超えておりました。そこでこれまで受診された眼科同様に当院でも、多焦点レンズには向かない(多焦点レンズの機能が100%は発揮されにくい)眼である旨をご説明させていただきましたが、ご本にはどうしても多焦点レンズでの手術をと非常に強くご希望されましたので、角膜不正乱視成分が改善されるかどうか、ドライアイ治療を開始しました。すると2週間ほどで高次収差成分は0.111/0.168 µmと軽快し、円錐角膜疑いの%も大幅に減少したため、どうしても多焦点レンズご希望ならば、回折型でないレンティスコンフォートなら可能ではないかとご提案させていただきました。(学術的に明確な指標はなく統計的な解析もしておりませんが、経験上、回折型多焦点レンズを使用の際は、LASIK後の方含め角膜球面収差は0.5 µm以下、高次収差は少なくとも0.3 µm以下が望ましいと考えております。)

しかしながら、日常で夜間運転あり、趣味はゴルフ、仕事では保険代理店で細かい申込用紙を見る必要があり、それら全てを眼鏡なしで行いたいと、かなりハードルの高い希望を提示されました。レンティスコンフォートではその全てを叶えることは当然無理ですので、確実性からは両眼ともミニウェル・レディが1番その要望に近い結果を得られるのではとお勧めしましたが、まずは白内障の進行している左眼をミニウェル・プロクサで手術して欲しいと、WELL FUSION System®での手術をご希望されました。

非優位眼である左眼にミニウェル・プロクサを使用することはWELL FUSION System®に合致していますが、①角膜形状的には左眼より右眼の方がプロクサに向いている点、②プロクサには乱視用がない点、③優位眼の右眼ミニウェルより先に非優位眼である左眼プロクサの手術を先に行うことによる適応不良のリスクがある点、をご説明させていただき、場合によっては入れ替えの可能性もあることを同意いただき、不安は残るところですが左眼ミニウェル・プロクサでの手術を先に行うこととしました。そして入れ替えリスクと不確定要素である慣れの期間を考慮して、右眼の手術は左眼の1.5ヶ月後としました。

さらにこの方は眼軸長が21mm台と短く、角膜屈折度は46.5D以上と強いため、術後屈折誤差リスクが非常に高いことも、屈折度ピッタリゼロを狙う手術はハードルが高く、正直あまりやりたくはないなぁというのが術者としての印象でしたが、遠方から何度も足を運んでいただきましたので、その熱意に応えるべく入念に手術の準備を行いました。

左眼は瞳孔領に及ぶ強い皮質混濁後嚢下混濁を伴う白内障であり、視力0.2矯正不能とかなり低下しておりました。手術に関しては、術後屈折誤差回避のため術中波面収差解析装置ORA system®を使用しましたが、残念ながらミニウェルはグローバル最適化されていないレンズであるため、ORA system®の推奨する度数はそれほどあてになりません。そこでこれまでの当院でのミニウェル使用時のORA測定結果と術後屈折誤差の回帰式と、ダミーレンズでの測定結果を参考に度数決定を行いました。入れ替えリスクもあるため、当然チン氏帯の補強具であるカプセルテンションリング(CTR)も挿入し手術は問題なく終了しました。

術後は懸念された術後屈折誤差や適応不良も生じず、強主経線上切開により乱視もほぼゼロとなり、遠方1.5p/近方1.2と良好な裸眼視力に、「期待以上によく見え愛犬の爪も裸眼で切れるようになった」と大変喜んでいただけました。そして結果として、やはりプロクサの場合は通常のミニウェルとは異なる目標屈折度設定を行う必要がありましたので、術後自覚屈折度を加味したA定数の最適化の必要性を感じました。

その後左眼はハログレアなどの異常光視症も気にならないとのことでしたので、入れ替えの可能性がほぼないことを確認して、予定通り右眼ミニウェル・レディの発注を行いました。

手元は左眼でじゅうぶん満足とのことでしたので、右眼は遠方を犠牲にする必要なく度数設定を行い、左眼で術後屈折誤差の傾向の把握ができておりましたので、より自信を持って手術を行うことができました。右眼もORA systemとCTRを用いて無事手術終了し、こちらも術後は遠方1.5p/近方1.2の裸眼視力に満足していただけました。数値としては近方視力の左右差はありませんが、感覚的には30cm付近は明らかにミニウェルプロクサの左眼の方が見やすいと言われていました。

先日ほかの患者様に「先生はミニウェル推しなんですか?」と診察時に聞かれましたが、私は全く「ミニウェル推し」ではありません。適応判断や度数設定の難しさ、全てにおいて正確さを要求される点、レンズ輸入のための手続きや、バックアップとして準備した未使用のレンズ返却費用負担(患者様からはいただいておりません)など、未承認レンズであることを含め、むしろ決して率先して使いたいレンズではないことはご理解ください。厚労省承認のレンズで満足できそうな方は、もちろんそちらを選択されることをお勧めしますし、当院でも多焦点レンズご希望の方は、まずは選定療養対応レンズから選択いただいております。

今回は、患者様の熱意がなければ、多焦点レンズでの手術は行わなかったかも知れないチャレンジングな症例でしたが、結果的に大満足していただきこちらも大変嬉しく、また適応判断の勉強になりました。後日談ですが、白内障手術学会参加のため京都に向かう際に、東京駅の新幹線改札で偶然診察後の患者様に声をかけられたのにはビックリしましたが、何かとご縁があったのかも知れません。ちなみに「裸眼で爪切り」は意外とハードルが高いので、その点をクリアできて私も大満足です。

2022.09.23

Q.手術前はどのような状態でしたか?

相手車のナンバーや標識、看板が見えず距離範囲が取れず、すれ違いや幅寄せが困難であった。
スターバーストで眩しく恐怖だった。
PCやスマホのメール送受信でミスが多く、字も書きずらく眼鏡が効かず、探し物が増え、疲れて眼と頭が痛かった。
ゴルフでボールが当たらなかった。

Q.手術を受けようとしたきっかけは何ですか?

早急に手術をしなければ危険であり、仕事上の責任もあり(保険代理店・コンディショニングセラピスト)、生活その他ほとんど支障をきたすと思っていた。
兄が多焦点レンズ(パンオプティクス)を入れ、状況を克明に判断しやすかった。

Q.手術中に痛みはありましたか?

左眼は注射のチクンとした痛みのみ。先生のリリースであっという間に終わった。
右眼は自身の疲れや緊張で震えもあり、手術後半で麻酔の切れたような痛みがあったものの術後対応により完治(投薬)。注射のチクンと痛かった。

Q.手術後の見え方はいかがですか?

くすんでベージュ色だった景色が鮮やかでクリアになり、特に白、パステルカラーが見えるようになった。
手元は30㎝、スマホも書類も動く犬の爪も良く見え、車の運転も正常に戻り、スターバストなど全く気にならなくなった。

Q.日常生活(お仕事、運転、スポーツなど)で変わったことはありますか?

眼鏡が要らなくなった(30㎝より手前の細かい物以外)
ゴーグル(度なし)をするようになった。
目薬を点眼するようになった。

Q.多焦点レンズと単焦点レンズのどちらを選ばれましたか?

今の世の中に出ている数あるレンズの中で自分の求めるものに一番近いと思った。
とにかく眼鏡をかけたくない。
極力生活や生き方の質を変えたくない、煩わしさ、経費、時間(特にさがす時間)

Q.同じような症状で困っている患者さんがいるなら、手術を勧めますか?

ミニウェル(プロクサ)を日本での先行使用施設として選ばれし病院(医師・スタッフ)であること、対応してくださる医師がオンリーワンであること、スタッフの方々が親切丁寧で対応が良いこと、以上の理由でこちらを選びました。
生まれ変わったイタリア製の眼を自慢しています。眼のことは迷わずこちらをお勧めしたい。安心である。